「核のない世界を求めて」

キリスト者政治連盟委員長   
坂内 義子(ばんない よしこ)

 「核兵器を持たず、作らず、持ち込まさず」という非核三原則を国是としてきたはずの日本ですが、「核兵器持ち込み」は「黙認する」という密約が1960年の日米安保改定の折になされ、交換公文と両政府間の口頭了解で事前協議の対象と決められていたという事実が、7月に元次官らの証言で明らかになりました。これは国民に対する驚くべき欺瞞です。日本政府は、現実には一度も事前協議が行われていないことを逆手にとって、「一度も協議をしていないのだから核の持ち込みはない」と「核密約」の存在をも否定する国会答弁を続けてきました。
 「非核三原則」が厳密に守られていると信じている人の方が少数であるかもしれないし、外交には秘密がつきものだという考えもあるでしょうが、政治のトップたちがかくも平然と国民に対して嘘をつき通すことに驚きと憤りを感じざるを得ませんロマ書の「義人はいない、一人もいない。・・・彼らはその舌で偽りを語った。・・・彼らの道には破壊と悲惨がある。そして彼らは平和の道を知らない。彼らの目には神に対する畏れがない」という詩篇からの引用とされる聖句を心に痛みを伴って思い浮かべます。また聖書には「隠されているもので知られずに済むものはない」(マタイ10:26)という言葉もありますが、キリスト者と言われる麻生首相も元防衛庁最高幹部も、なぜ勇気ある真実を語らないのか、残念です。信仰と政治は別という二元論を私どもが「常識」として認めるなら、地の塩としての役割を放棄したことになります。国民を欺く「不正義」に対して私どもは目をつぶることはできません。欺瞞に満ちた自民党は敗れ民主党に政権が移りました。鳩山新政権に対しては、「非核三原則」の法制化と憲法9条の厳守を求めたいと思います。日米安保条約の解消も重要課題です。軍事同盟を結ぶのでなく、世界各国が通常の兵器をも廃棄して相互に信頼関係を作り上げることが「核抑止力」を必要としない世界の実現のために必須でしょう。
 5月にオバマ大統領は「核のない世界を求めていく」と演説しました。が、翌月、韓国に対して「核の傘の提供」の約束をしています。武力に依らない平和外交構築の難しさを思わせます。が、「核廃絶」の最後のチャンスとして、今、この時代を生かさねばなりません。
 新政権は、「非核三原則を守る」と言いながら、裏でオバマ大統領に「核軍縮を求めないでほしい」と要望するような、恥ずべき二元外交とはきっぱり断絶すべきでしょう。ヒロシマ・ナガサキの悲劇を忘れ、敗戦後の悔い改めを忘れ、敗戦後の悔い改めを忘れ「人類絶滅の核兵器」に依り頼もうとするならば、やがて神様から鉄槌を受け、国そのものを滅亡へと導くでしょう。私ども平和ネットの構成団体であるキ政連は、オバマ大統領の勇気ある発言に対して猜疑心を捨てて、「核なき世界」「軍事拒否国家」の実現のために全力を注ぎたく願っています。




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