祈りの手をあげて
具志堅 聖
日本聖書協会総主事 
「悪から離れ、善を行え 平和を求め、これを追え。」(1ペトロ3:11・聖書協会共同訳)

来年(2025年)日本聖書協会は聖書普及事業150年記念の年をむかえます。英国から始まった聖書協会の働きは世界約240の国と地域に広がりました。1946年5月に13の聖書協会の働きかけで「聖書協会世界連盟(United Bible Societies/略称UBS)」が創設され、世界中の聖書協会の働きを連携させ、相互協力を推進し、効率よく多くのプロジェクトを行うことができるようになりました。そのような聖書協会の働きですが、常にその時代の政治的対立などの影響を受け、その度に皆で一つとなって祈り、主なる神の介入による和解と平和を祈り続けています。

2024年10月にUBSの会合が開催され、200名を超える聖書協会の代表や聖書関連団体の担当者が集いました。そのプログラムの一コマに「戦時下にある人々のための平和の祈り」の時がもたれました。そこに、イスラエル・パレスチナ・ヨルダン・レバノンの聖書協会の関係者が登壇しました。さらにイラン・ディアスポラの代表などの方も加わりました。UBS代表は聖書を朗読し、戦争の即時停戦と人道支援の速やかな提供、心の傷を負った多くの市民の癒しを心から願う祈りをささげました。被災者の手に聖書を届けると共に、トラウマヒーリングの援助活動を行うチームがさまざまな所で展開しています。トラウマヒーリングとは暴力や災害などで心に傷を負ったひとに寄り添い、聖書の学びを通してその方を癒しのプロセスに導くプログラムです。昨今世界中でこのプログラムが用いられています。

パレスチナでの戦争、ウクライナでの戦争だけでなく、アフリカや中央アジアにも紛争があります。それらすべての地域にキリスト者がいて、教会が存在していて、聖書協会が活動しています。思想や意見の違い、歴史観の違いなど実際に存在します。私たちはそれらの違いを超えて、聖書に耳を傾け、共に互いのために祈ることを実践しています。無力感を覚えるようなニュースを聞くたびに、私たちは祈りの必要性を訴えて、時を定めて祈りの時を持っています。

願わくは日本に住む私たちも、悲惨な報道を聞くごとに、立ち止まって、祈りの時を持てたら幸いです。祈りは、いつでも・どこでも・誰でもできる愛の行為です。このような時代だからこそ、共に祈りの手をあげていきましょう。          (ぐしけん きよし)