「正義が失われていく時代に抗して」
日本キリスト改革派教会 大会宣教と社会問題に関する委員会委員長
弓矢健児
 「悪を憎み、善を愛せよ。また、町の門で正義を貫け」(アモス5:15)
 私たちは、真実が歪められ、嘘、偽りが平然と語られ、数の力という暴力によって法と正義が失われて行く、そんな現実をここ数年、国会において見て来ました。森友学園、加計学園の問題だけではありません。ここ数年の間に安倍政権は、報道の自由、集会・結社・言論の自由を侵害することを可能とする「特定秘密保護法」、「共謀罪法」を強行し、解釈改憲によって集団的自衛権行使容認の「安保法制」を強行してきました。憲法の立憲主義や平和主義を無視するこのような安倍政治は、主キリストから委託された権能を正しく行使しているとはもはや言えない状態です。それでも安倍政権がそうした政治を行っている背景には、日本を再び戦争のできる国にするという目的があるからです。そのために安倍政権が最終的に目指しているのが9条改憲です。
 さらに、安倍政権の下で進められているのが国家神道体制への回帰の企てです。2016年5月26日、安倍首相は伊勢志摩サミットのために来日した各国首脳を伊勢神宮の内宮の入り口で出迎え、正式参拝の場所である御垣内に案内しました。皇祖神を祭る伊勢神宮は、靖国神社とともに戦前・戦中、祭政一致の国家神道の中心的施設としての役割を果たしたのであり、安倍首相の行為は憲法の政教分離原則に反する行為です。また、来年は天皇代替わりに伴う様々な儀式が一年かけて行われますが、政府は30年前と同様に憲法の政教分離と国民主権の原則を無視して、皇室神道と天皇主権の性格を持った儀式を国事行為として行おうとしています。さらに、宗教儀式そのものである大嘗祭にも国費を投入しようとしています。
 世界的に極右が台頭している昨今ですが、日本も決して例外ではありません。教育現場における「日の丸・君が代」の強制、道徳の教科化、在日外国人に対するヘイトスピーチの蔓延、「教育勅語」を美化する政治家の発言など、旧日本への回帰を目指す極右的な動きがここ数年一段と強まっています。
 私たちは安倍政権の下で進められているこのような政治の動きに対して、決して沈黙していてはなりません。イエス・キリストを全世界の王であり、教会と国家の主であると告白する私たちは、大胆に主の御言葉を語り、正義と平和の実現のために信仰を証しする闘いへと導かれたい。
                     (ゆみや けんじ)