武力によらない平和構築を目指して
カトリック札幌教区司教
日本カトリック正義と平和協議会会長
勝谷太治

 今年4月14日と6月2日に「集めよう!3000万人署名 止めよう9条改憲 カトリックシスターたちが呼びかける署名行動」シスターズアクトが新宿西口小田急デパート前で行われました。シスターたちとともに、多くの諸宗教の方々も参加され大変手応えを感じる署名活動となりました。シスターたちの爽やかな聖歌に足を止める人も多くおられたようで、私たちの活動のやり方にも大変参考になるものでした。改憲を阻止する為に必要なことは、選挙や国民投票で改憲反対の立場をとる人達を増やすことです。その為に大切なことはただ厳つい顔をして声を荒げて反対を連呼するだけではなく、私たちの声に耳を傾け共感してくれるシンパを増やすことです。今回の試みはそういった意味での大きな収穫を感じます。
 さて、以下の文は先日広島で行われた9条世界会議での挨拶として用意したものの一部です。今回はそれをもって巻頭メッセージとさせていただきたいと思います。
 およそ50年前カトリック教会は第2バチカン公会議を開きました。そこで出された現代世界憲章の81項に次のように書かれています。
「神の摂理は我々が常に戦争に訴えるという古来の悪習を断ち切ることを切に求めている」
昨年「核兵器禁止条約」が国連で採択されました。残念ながら日本は反対に回り、批准はおろか、その話し合いの席に着くことも拒否しました。
 一方今、世界中の多くの平和グループは、「Non Violence」「非暴力」による平和構築のキャンペーンを行っています。これは、「戦争」すなわち「武力行使」そのものをたとえそれが防衛のためであっても、「違法」とすることを目的としたものです。
核兵器のみならず、武力行使を非合法とするのは現実的とは言えないかもしれません。しかし、少し前までは核兵器の非合法化などは非現実的と考えられていました。完全ではありませんが、核保有国以外の世界の国々はこの条約を支持しているのです。「戦争」の非合法化も単なる非現実的な理想ではなく、必ず実現する日が来ると信じて活動しています。そして、9条はその理念を先取りするものです。
 日本国憲法9条を今の時代に合わない時代遅れの非現実的な条文だと主張する人達がいます。9条の理念は確かに現実ではなく私たちの求める崇高な理想を語ったものです。現実に合わないからと行って追い求める理想を下げ、現実に妥協し続けては私たちの社会は人間の愚かさが支配する悲惨なものとなってしまうでしょう。9条は時代遅れではないばかりか、むしろやっと時代が9条の理想に追いついてきたと言うべきです。非暴力による平和の理念を謳う日本の憲法9条をなんとしても守っていきましょう。                    
                       (かつや たいじ)