武力の放棄は積極的平和貢献

島田茂 日本YMCA同盟 総主事

 今、日本は集団的自衛権の問題を巡って国民の意見が分かれています。
 集団的自衛権とは、「他の国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う」もので、「第三国が集団的自衛権を行使するには、宣戦布告を行い中立国の地位を捨てる必要」があります。
 しかし、武力を使うことで国民の平和は維持できるのでしょうか?
 過去に日本は、中国に侵略して第二次世界大戦を誘発し、2千万人ともいわれるアジアと自国の民を死に追いやりました。そして、終戦の年、広島・長崎には歴史上最初の核兵器が使われました。両市が標的となったのは、両市に軍事施設があったためともいわれています。こうした歴史は、軍隊があることでかえって市民の命が危険にさらされていることを証明しています。
 戦後日本は平和憲法を制定し、国民が主権となり、国家や権力の暴発を防ぐ法律を採択しました。以来、ODAや国際協力活動、市民による交流活動などにより貧困にあえぐ世界中の発展途上国を支援し、世界の平和に貢献してきました。また、政府は「集団的自衛権の行使は、戦争を永久に放棄した憲法に反する」という解釈を維持してきました。武力の行使はさらなる暴力の連鎖を生み、核兵器の使用につながる危険性をはらんでいます。集団的自衛権を行使して、戦争に加担すれば、日本は再び核兵器の標的になる可能性もあります。国民を守るつもりが、滅亡に追いやってしまう本末転倒の危険性をはらんでいるのです。世界の滅亡にすらつながりかねない核兵器そのものを廃絶することこそ、平和憲法を持つ日本ができる、世界に対する積極的な平和貢献であると考えます。広島平和文化センター前理事長のスティーブン・リーパー氏は、著書の中で「核兵器を使用された国として日本が核廃絶に強く打って出れば、世界のヒーローになれる。2020年のオリンピックは、核時代の終わりを祝う祭りになる」と書いています。
 今、私たち一人ひとりに選択が迫られています。戦後69年の間に築いてきた日本の平和主義の立場を捨て、戦争ができる国への道を選択するのか否かということです。
 聖書では、「彼らはその剣を鋤に、槍を鎌に打ち直す。国は国に向かって剣をふりかざすことなく、もはや戦うことを学ばない」(イザヤ書2章4節)とあります。私たちYMCAは、これまで同様、キリスト教団体として聖書に基づき、武力ではなく、国際協力や交流に基づく対話を通して世界の平和を築く責任を果たしていきたいと考えます。
                                 (しまだ しげる)





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