「日本聖公会主教会 東日本大震災1周忌を迎えて」より

イエスは「さあ、来て、朝の食事をしなさい」と言われた。

(ヨハネ21:12)



 東日本大震災犠牲者のため、そして今なお困難な状況におかれている被災者のため、祈りをお献げください。1年前の今日、東日本を襲った大震災と大津波は、家屋や工場を倒壊し押し流し多くの尊い命を奪い去りました。福島第一原子力発電所は制御能力を総て失う最悪の事態に陥り、原子炉内の核燃料融解、原子炉建屋の水素爆発による破壊によって大量の放射能物質が空気中に飛散し、土や海や空を汚染し、住民は避難を余儀なくされました。今も多くの被災者が恐怖と不安に脅えながら仮設住宅や避難先での生活をしています。
 日本聖公会は大震災発生1ヶ月後、被災者支援のための方策と救援物資集積場設置を協議し、仙台に本部を置く「いっしょに歩こう!プロジェクト」を設立し、東北教区被災者支援組織と協議しながら、被災者支援、地域社会復興のための活動を開始しました。教区・教会・日本聖公会関係団体は、このプロジェクトの働きを支援してきました。海外の聖公会からも多額の義捐金が寄せられ、大震災被災者支援、犠牲者のご遺族、家屋が倒壊した人々の見舞、被災した教会・関係施設の復旧のためなどに用いています。
 世界で唯一の被爆国である日本は、原爆の悲惨さと核兵器廃絶を世界に訴え続けてきました。その一方で、原子力の平和利用の名のもと、原子力発電所が日本各地に建設され、より多くの電力を消費することで私たちは快適な生活を享受してきました。東日本大震災は、原子力発電の安全神話を打ち砕きました。原子力に依存するエネルギー政策の転換と、私たちのライフスタイルの転換が強く求められています。
 2千年前、イエスが十字架上で悲惨な死を遂げ、失意の底に落とされた弟子たちはガリラヤに行き、夜、漁に出ます。魚は1匹も捕れません。絶望感に襲われ朝、陸に戻ろうとした時、イエスが岸辺で焚火を起こし、焼いた魚とパンを用意して、弟子たちが戻るのを待っていました。弟子たちはその人がイエスとは気づきませんが、イエスが示す場所に網を入れると沢山の魚がかかりました。復活のイエスは弟子たちに、どのような状態におかれても主は彼らを決して見放さず、生きるために必要なものを常に備えてくださることを示し、愛で結ばれた人々による新しい世界を創造するよう、弟子たちに命じたのです。
 東日本大震災から1年、被災した方々、身近な人を失った方々が穏やかな生活を取り戻すには、さらに多くの歳月と困難を伴うことでしょう。そのような苦しみの中にあって、神さまがお一人ひとりに寄り添って心と体をお支えくださり、生きる勇気と希望が与えられますよう切に祈ります。私たち教会に集う者が、被災地での神様のお働きを担っていく者として、引き続き、被災者支援と地域社会復興のために活動を続けていくことを改めて心に刻みたいと願います。

(文責 聖公会信徒 糸井玲子)






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