『日本の精神風土と自治会』


キリスト者政治連盟副委員長 
坂内義子(ばんない よしこ)


 「すべて良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ。」(マタイ7:16−18)。



 浜松で長年「政教分離」の闘いを続けてこられた溝口正氏は、このみ言葉から、「日本人を育て上げる一番の根源に、悪い根があるのではないか。日本精神、大和魂、宗教、伝統、風俗習慣、天皇制などなど、これらが混合されて日本的な精神風土を形成しているとすれば、この木から皇国史観や侵略戦争という悪い実を結んだのではないか。さらに無反省、無責任、大勢順応などの悪い花も、今まさに咲かせつつあるのではないか。もしそうなら日本的な精神風土は悪い木なのではないか」という趣旨のことを述べられています(1986年矢内原忠雄記念講演会)。私が、今直面している問題において改めて教えられます。
 30数年前私共が埼玉県所沢市在住時代に、「神社の氏子費は別会計に」という闘いに夫と参与、理解までに年月を要しました。約3年前に現住居(神奈川県藤沢市)に移住。大規模マンションですが、やはり氏子共同体の一員として組み込まれているのです。私共は自治会長に「信教の自由・政教分離の原則および公金を神社に納めることは憲法の規定に違反する」という考えを口頭と文書とで伝えました。年度が変わりましたが、尚自治会費から「祭り費」として50数万円も計上されています。「善人」には違いない旧会長は「祭り」は宗教行事でなく慣習、子どもたちの思い出づくり、また、神社への奉納金は僅かであって、地元との友好関係上協力が必要との考えです。更に当団地建設の際「地鎮祭」を行なったので安全が守られたと言われます。新会長も「祭りは住民の団結に大切」という考えです。日本の社会は正義より和を大切にします。波風を立てず「善悪の区別なく団結して公権力に協力」、これこそが溝口氏の言われるように、悪い実を結ぶ悪い木=混合的日本精神を育てているのではないでしょうか。安倍政権になって地方も国も「大和魂」礼賛の傾向は強まる一方です。「たかが地域の祭」という声もあるでしょうが、「小さなことに忠実でなければ大事に忠実ではあり得ない」し、また「小さなことから民主主義が壊れる」恐れもあることを心に刻みたいと思います。最初に挙げた溝口氏は、最近の教育基本法改訂など、日本の右傾化に対して心痛の余り体調を崩され、5月12日急逝されました。氏の闘われてきた「悪の木を育てて悪い実を結ばせない」働きを、小さく弱い者なりに、しっかと継承し、身近な所で「悪い木」を「美しい木」に代えるために、主のみことばに依り頼みつつ歩みたいと決意を新たにしています。





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