平和を実現する人たち


日本YMCA同盟 総主事
山田公平(やまだ こうへい)

 最近気になることがあります。多くの青年たち、子どもたちが、生きる目標や、喜び、家族との一体感を持たない、持てないまま育っているのかなと思うような事柄が見られるのです。目に見える形では、引きこもり、ニート、不登校、万引き検挙数の増加などですが、それらは氷山の一角であるように思います。その水面下で(に)は、多くの人たちが自分のことで精一杯で、精神的にもストレスを感じやすく、もろくなっているようです。そこでは、周りの人たちと平和に仲良く生きようとか、みんなで一緒により良い方向にしようという意識や意欲は生まれてこないようです
 3月に福岡で九州大学YMCA100周年が行われました。その記念講演で、OBである中村哲さんがペシャワールの会でのお話をしてくださいました。中村さんは、小児科の医師として1984年に現地に行き、もう20年以上も活動を続けてこられ、今ではアフガニスタン農民たちの自立を可能にするための土地改良事業を行っていると言っていました。その中村さんが、講演の最後にこんなことを言っていたことが思い出されます。
 夏には日本から青年たちがボランティアでアフガニスタンにやってきます。その青年たちが2か月もすると目を輝かせるようになるそうです。日本にはないものを発見するからだと中村さんは言います。それは、生きる厳しさ、人と人が生きるために協力し、支え合っている姿、子どもたちのすばらしい笑顔・・・日本にいたときに全く気がつかなかった人間の姿、価値に出会って青年たちは大きく変化していくそうです。日本にいて見えない価値、考え方、人間としての生き方を、貧しい国アフガニスタンで共に生活している中で気づいていくのです。そんな経験、感動がその後の青年の生き方、考え方に大きな影響を与えるのだろうと思います。青年期に必要な大切な糧であると感じました。
 わたしたちの住むアジア社会は、共に生きる共同体をずっと持ち続けて独特の文化を築いてきました。しかし、自分たちの便利さ、速さ、快適さを求めてきた中で、地域の住民が共に喜び、共に問題に取り組むような人間社会の原点がなくなってきています。特に今の若者世代には、ますます感じられず、遠のいているように思われます。自分の生活にとって「なくても良いもの」、「なくても困らないもの」はどんどん削られて来ました。そんなわたしたちの心に平和な共同体意識が宿っているでしょうか。アフガニスタンに行って、何かに気づき、目を輝かせてきた青年、そんな体験が青年だけでなくわたしたちにも必要になっているように思えます。目に見えないもの、そこにある価値が人間にとり大切なものを与えてくれるように思います。





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