信じること・希望をもつこと


キリスト者平和ネット 事務局代表
鈴木伶子

 このたび私は、平和を実現するキリスト者ネットの事務局代表に就任しました。小河義伸前代表が、NCC副議長就任に伴い事務局代表を辞任なさったため、今の状況で家に遊んでいたら将来に悔いを残すと思い、任にふさわしくない者ですが、お引き受けしました。
 いま、国会では憲法改定に向けての国民投票、教育基本法改定、共謀罪など、平和の実現を妨げる法案が目白押しです。米軍再編問題も力によるごり押しが通っています。「2006年という軍国主義に向かって決定的に歩みだした歳に、あなたは何をしていたか?」と次の世代に問われることは確実でしょう。
 国会周辺での活動に参加することが東京に住む者の責任だと思いつつも、何をしても与党が数で押し切る現実に、心身ともに疲れを感じることもあります。そのような中で、キリスト者平和ネットの仲間の笑顔は大きな励ましです。何より、挫けないでいられる最大の原因は、思いに任せぬ状況でこそ、聖書のみ言葉が真実味を持って語りかけてくるためです。聖書が「目に見えるものに対する希望は希望ではありません」と語りかけてくる時に、私は本当の希望は何なのか、目を高く上げて考えます。聖書が「祈り求めるものはすべて得られたと信じなさい」と告げるときに、信じることの真の意味を考えさせられます。すると、今目の前に起こる事実は、広い世界と長い歴史の中の一場面に過ぎず、永続的でも絶対的でもないことがわかります。
 5月初旬にパレスチナに行きました。パレスチナでは、自治区でさえも壁や検問所によって町が完全に分断され孤立させられており、実質的にはイスラエルの圧倒的な力に支配されています。土地も水も取られ、テロ支援を防ぐと言う名目で、パレスチナへの送金がストップされ、文字通り兵糧攻めです。経済力のある人のアメリカ移住が増えています。絶望的な状況の中で、パレスチナの友人たちは、笑顔で元気に歌い、オリーブの木を植え、自立のための技術を身につけ、次世代の育成に努めていました。そして自衛隊派遣をした日本の将来を案じていました。彼女らは、いつか必ず、自分たちが故郷に帰る日が来るという希望を持っています。目に見える状況が明るいから希望を持つのではなく、あるべき姿を信じ、その実現を疑わないから、希望を持つことができるのです。
 キリスト者も、来るべき神の国に向かって生きています。その道を先立って歩いていかれるイエス・キリストは、すでに身をもって和解と平和を実現なさいました。私たちは、その平和の業が、やがて完全に実現されることを信じています。憲法や教育基本法を守り、基地に反対することは、その道を進む一歩です。いつの日にか、神ご自身が和解と平和を完全に実現してくださることを信じ、共に励まし合って歩んでいきたいと願います。





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