「過去の間違った歴史に向き合うこと」
 牧師/在日大韓基督教会総幹事  金柄鎬 
 冷戦時代さなかの1957年、韓国で生まれた私が強く受けた教育が二つあります。一つは「反共」です。朝鮮戦争によって韓半島は完全に真っ二つになり、休戦線を境に互いに睨み合っていました。悪いのは全てソ連や中国の支援によって戦争を起こした北朝鮮の金日成であり、韓国は彼をやっつけるために教育と思想に「反共」を国の政策として取り入れました。高校の科目にも「教練」があり、軍事訓練をさせられ、ほぼ3年間の兵役を過ごしました。軍隊での苦連の全てが北朝鮮をやっつけることでした。  もう一つは「反日」です。日本帝国によって抑圧された36年間を覚え、日本は「悪い」ということしか頭にありませんでした。漫画や映画には、植民地時代に日本軍や警察が朝鮮人を苦しめ、独立運動家を逮捕し拷問する場面がよくありました。被害国・被害者としては消せない、その傷跡がいまだに残っています。殴った者は忘れたかもしれませんが、殴られた者は生涯忘れることが出来ません。  しかし、私が1986年に来日してから感じたことがたくさんありますが、その中の一つは日本帝国から被害を受けた者が日本国内・日本人にも多くいたことでした。中国の旧満州から残留孤児の肉親を捜すテレビ番組を見て驚きました。東京空襲で多くの犠牲者が出たこと、広島や長崎の原子爆弾による数多くの犠牲者、沖縄の犠牲者、直接戦争に行った兵士たちなど、日本帝国による犠牲者は朝鮮の人々やアジア諸国の人々だけでなく日本人にもたくさんおり、その後遺症はいまだに残っていることを実感しました。  間違って始めた戦争によって、どれほどの人に被害を与えたのでしょうか。終戦後78年が過ぎた今、その戦争の歴史に対する清算がきちんと出来たでしょうか。「和解と平和」は、その過ちをしっかり清算してから始めることが出来るのではないでしょうか。  日本をはじめ世界の強大国は、戦力強化に向かっていることが目に見えています。いわば冷戦時代に入ったように考えられます。この頃、日本は過去に行った行為を修正しようとしていると強く感じています。旧日本軍慰安婦や徴用、さらに、1923年9月1日に起きた「関東大震災朝鮮人虐殺」に関しても、多くの証言と記録があるにも関わらず、その事実に向き合うことを避けています。  韓国も日本の過去の歴史に関して正直に向き合って解決すべきではありませんか。これこそ「和解と平和」に向かう第一歩です。
                    (キム ビョンホ)