今できることを続けていく
日本YWCA 副会長 樋口さやか
 日本YWCAでは、ひろしまを訪問し、現場を目で見て、被爆者の声を耳で聞き、日本がアジア諸国に対して行った加害の歴史、核兵器が生み出す被害の実相を学ぶ「ひろしまを考える旅」というプログラムを50年に渡り、毎年、実施してきました。このプログラムを通して、YWCAの会員である自分たちが平和について学び、日頃の活動に生かしていくと共に、これから社会を担っていく若い世代の参加者に対して、戦争の愚かさ、また、そのような悲劇を二度と起こさないために何をするべきかを伝えてきました。
 しかしながら、2020年からはコロナ禍の中、現地への訪問ができなくなり、実施できずにいます。この間、核兵器廃絶に向けて、核兵器禁止条約の発効など、平和に向けての前向きな動きもありました。一方で、私たちが平和のための営みが止められてしまっている中、世界では紛争の火は消えず、さらに広がり、核兵器の使用がこれまで以上に危惧される事態ともなりました。さらに、私たちがプログラムを実施できずにいた間に、これまで私たちにさまざまなことを教えてくださっていた被爆者の方も失いました。そのような訃報を耳にする時、また、パレスチナやウクライナなど紛争の中にあるそれぞれの地からの現状を伝える声が届くたび、私は自分の無力さを感じさせられます。
 そのような現状の中で私が最も危機感を覚えるのは、反対声明の表明や座り込み行動など、この制約下でも自分たちのできる意思表明をするための行動に対して、冷笑を浴びせる雰囲気が世の中をこれまで以上に包んでいるように感じることです。一人の人間としての無力さを強く感じる今、私たちが声をあげても社会を変えることはできないと考え、長い物には巻かれることが得策であると見なし、自分たちの声を上げようとしている人々の声を嘲るような言動が増えてきていないでしょうか。圧倒的な理不尽を前にして無力さに襲われることは自然なことだと思います。しかし、不正の中で苦しみの中にいる人たちと私たちは決して無関係でいることはできないはずです。それに対して、自分のできる行動をすること、意思表明をすることは今、私たちができる行動として非常に重要であると考えます。コロナ禍という非常に難しい状況下でありますが、今私たちができることを大切に、長い物に巻かれず、私たちが貫くべき行動とは何かを考えながら、今後も活動を続けていきたいと思います。
                      (ひぐち さやか)