I am a PIECE of PIECE
アジア保健研修所(AHI) 羽佐田 美千代
 アジア保健研修所(AHI)はキリスト教の精神を基盤として、人に信頼をおき、一人ひとりがその力を発揮できるようになることを目指して活動しています。
 ここではスリランカのフランシスさんとその仲間のスランギさんのことをご紹介します。フランシスさんは全国漁民連合(NAFSO)の職員で、1995年にAHIの国際研修に参加しました。この研修には、アジア各国から構造的に弱い立場に置かれた人の権利を守るために働く人たちが集まり、経験を共有します。フランシスさんは弱い立場にある人たちも、連帯によって状況を切り開く力があることに気づき、研修後、内戦の続くスリランカで、共に平和を生み出す仲間を作ろうと、これまでに1000回を超える研修をしてきました。
 スランギさんは18歳の時に、フランシスさんの研修に参加しました。そこで問題の原因を分析することと、人とつながることにより活動を広げていく方法を学んだと言います。スランギさんは一軒一軒訪ねては、一緒に女性を力づけるための活動をしようと話し、15人の仲間と「女性平和グループ」を作りました。そして村の生活を蝕むアルコールや家庭内暴力、ドラッグの問題に、警察やお寺、若者や子どもたちを巻き込んで取り組んできました。25年を経て、小さな村ですが、今では女性平和グループには64人の仲間がいます。
 2009年5月、スリランカで26年続いた内戦が終結した時には、スランギさんたちは戦闘の地であったスリランカ北部の村をバス3台で訪問しました。NAFSOの呼びかけに応えてのことです。長く対立する相手と認識されてきた北部のスリランカタミルの人たち。実際に会うまでは、どんな交流ができるか不安でした。しかし、タミルの女性たちが温かく迎えてくれ、一気に緊張がほぐれました。戦闘が激しくなると山に潜んでいたこと、幼い子が泣き声をあげそうになった時、あわててその口にぼろ布をつめたという話には、みんなで肩を抱き合って泣きました。それ以来、今もずっと交流が続いています。
2019年4月、キリスト教の祭日に、スリランカの6か所で同時爆破テロが起き、多くの犠牲者が出ました。これはイスラムの過激な思想に染まった若者グループの犯行と言われています。その後にイスラム排斥の動きが全国で起こり、再び内戦のようになることが危惧されました。スランギさんたちは、村の指導者や住民グループと連携して、村の寺で平和集会をもちました。犠牲者のために祈り、イスラムの商店への襲撃を計画していた人たちを説得して、思いとどまらせました。
  「I am a PIECE of PEACE」、この言葉はやはり紛争の多い地域で平和活動を続ける元研修生が、語ってくれたものです。私たち一人ひとりが平和の一粒として、内なる平和を確かなものにしながら、スランギさんのように、身近な人に熱心に語りかけていく存在でありたいと願っています。       
                       (はさだ みちよ)