3L「LOYALTY LOVE LIBERTY」
公益財団法人 早稲田奉仕園 専務理事  阿部千秋
 2021年夏。東京は新型コロナウィルス感染が拡大、4回目の緊急事態宣言のさなかである。東京オリンピック・パラリンピックが開催される一方、収束が見えない状況に、だれもが不安と戸惑いによる息苦しさを感じている。

 私たちの団体「公益財団法人 早稲田奉仕園」は、1908年にアメリカ北部バプテストのハリー・バクスター・ベニンホフ宣教師が学生のためにキリスト教主義の寮を開設したことが始まりである。聖書を学ぶ集いを通して、寮生だけではなく広く青年たちに人格的な影響を与えたといわれている。「命のビザ」を発給した杉原千畝もそのひとり、1919年2月に「奉仕園信交協会」(現在の日本キリスト教団早稲田教会前身)の宣誓書に自筆と思われる署名がある。昨年、早稲田奉仕園スコットホール献堂100周年記念シンポジウムを開催した。1920年前後に信交協会に集った青年たちや当時の朝鮮人留学生と、三・一独立運動との関係性に焦点をおき〝若き日の出会い″というサブタイトルを付けた。
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 この瞬間にもガザでは空爆があり、ミャンマーや香港では人々の尊厳がないがしろにされているという報道を耳にする。普通に生活を送ることが脅かされている。今、同じ日本に生きているのに、厳しい状況におかれている難民の方々がおり、東日本大震災から10年経過しても癒えぬことのない気持ちを抱え苦しい状況にある人々、原子力発電所の問題、戦争の道具としての基地の問題、加えて気候変動に起因すると考えられる自然災害など、ここに書ききれないほどの様々な困難が私たちのすぐ隣にあることを決して忘れてはならない。コロナ禍により生活が困窮し、疲弊し、自殺者も増加している。私たちに何ができるのか?何をすべきなのか?
 このコロナ禍で多くの活動を中止・延期をせざるを得ないなか、奉仕園ではその時々の状況に柔軟に対応しながら、学生や関係者が中心となり、月に2回「ちかちゅう給食活動」という野宿をしている人たちにお弁当を配布する活動を粛々と続けている。
 私たちが直接できることは限られているかもしれない。しかし〝いまここに″〝私たちの隣″にある事柄にしっかりと目を向け、できることを丁寧に忍耐強く続けていきたいと願っている。一人ひとりの存在が神さまに愛され、生きていてよいのだというメッセージをだし続け、創設者の想いと志を確認しながらキリストの志に立ち返る私たちであるよう祈り続けたい。
 「大したことをしたわけではない。当然のことをしただけです。」杉原千畝氏の言葉が身に沁みる。                            
                      (あべ ちあき)