社会的弱者と災害弱者
ディレクター Church World Service (CWS Japan)  牧 由希子
 前回初めて寄稿させていただいた際、私たち団体のルーツや活動テーマを紹介させていただきました(№.197、2019年6月号参照)。その後、2つの大規模災害が発生し、支援に関わったことで新たな発見がありました。それは、最も支援が必要な人々はセーフティネットを持たず孤立した人々で、それ故に自分からは助けを求めにくいことでした。
 東日本大震災以降、水害・震災など様々な災害が続き、私たちの中で自然災害がより身近な存在になったのではないでしょうか。発災後、ボランティア登録に並ぶ長蛇の列が必ずメディアで取り上げられるようになり、被災地に入る支援団体やボランティア希望者も増えていますが、支援の手が届かない、見えにくい人々の存在は知られていません。
 災害時には小学校など公的施設が避難所として開放され、地域住民が滞在できますが、その一方で、そこに辿り着くこともできない「要配慮者」と呼ばれる人々がいます。通常、高齢者を筆頭に、障がい者、乳幼児、妊産婦、外国人などが想定されていますが、これまでの私たちの経験・調査から、様々な事情により、行政から把握されることがなく、地域でも孤立する人々の存在を知りました。例えば、認知症の高齢者夫婦だったり、災害知識・情報も在留資格も持たない外国人などが該当します。また、過去に報道された避難所に受け入れられなかった路上生活者も同じくです。そのような人々は、平時には社会的弱者であり、災害時には確実に災害弱者となります。
 災害対応は行政の役割と多くの一般市民に認識されていますが、このような社会的弱者は孤立しがちで、把握されず支援の手が及びません。そこで、私たちは中でも脆弱性の高い外国人に着目し、宗教者ネットワークを介して彼らにアクセスできないかと考えました。平時から外国人脆弱層のコミュニティにつながることで有事の際に安否確認ができ、必要な支援ができるようにするためです。先ずは30年以内に発生が予測されている首都直下型地震に備えるため、昨年から新宿区を中心に調査も開始しました。その活動を通して、外国人支援や地域で奉仕活動を行う都内のイスラムモスクやヒンズー寺院ともつながることができ、他宗教者との協働の可能性があることを知りました。
 では、同じく地域に立つ教会は、災害時にこのような行き場のない人々のためにどのような役割を果たすことができるでしょうか?ぜひ、この輪に加わっていただけるよう、賛同を呼びかけたいと思います。       
                     (まき ゆきこ)