今こそネットワーク・ムーブメントを!
NCC日本キリスト教協議会議長 吉髙 叶
 2021年度よりNCC日本キリスト教協議会の議長に就任しました吉髙叶と申します。みなさまとご一緒に、平和と和解の福音に仕え歩ませて頂きたいと願っています。どうぞよろしくお願いいたします。
 ずいぶん以前のことになりますが、NCCの事務所には、総幹事の他に数人の有給の幹事がいて、宣教奉仕部門の諸委員会の企画や運営の実務を担当していました。しかし、幾たびかの機構改革(それは財政課題から来るものでもありましたが)を経て、それぞれの委員会に運営が委ねられていくようになりました。たとえそうであったとしても、憲法改悪ステージ等の歴史を画する事柄に対し、キリスト教界が一致し、さらに市民や他宗教との連携をつくりながら抗していく共同アクションの企画や推進のためにネットワークの構築の必要が迫られ「キリスト者平和ネット」が立ち上げられたことを記憶しています。そして、まさにそのようなネットワークの受け皿・結び目として「平和ネット」が今日まで動いてきてくださったことに心からの感謝をしています。
 さて、新型コロナによる「緊急事態宣言」が出されたり引っ込められたりしながら1年以上が経過しました。「緊急事態宣言」をめぐる一喜一憂と百家争鳴の日々です。そうしながら、わたしたちは、「緊急事態」を考える思考を限定されたり均質化させられようとしています。たとえば、福島第一原発事故の「緊急事態」は続いていたのですが、あの日「アンダーコントロール」という偽りの誘致発言で東京オリンピックが決まり、震災・原発被災地の復興は停滞しました。いまなお被曝の危機は緊急事態の中にありますが、放射能物質の海洋投棄が決定してしまうのです。沖縄辺野古には、沖縄戦による戦死者の遺骨がまじった土が埋められていることがわかり、ストップして検証しなおすことが緊急な事態であるにもかかわらず、無視されています。2月1日のミャンマー軍によるクーデターと、それに抗議する市民たちへの虐殺行為は、有無を言わせないほどの緊急事態であり、ミャンマー国民たちから国際社会への必死のSOSを受けながら、しかし4ヶ月たった今もなお適切な関与ができないままです。イスラエルのパレスチナ空爆も緊急事態、入管法の改悪によって生死の境界線を圧倒的に狭められていく難民申請者や拘留外国人たちにとって、それは緊急事態です。私たちの社会はいのちにまつわる緊急事態をたくさん抱えています。
 「緊急事態だからステイホーム」と連呼される日々の中で、あまたの緊急事態がスルーされていきます。「ステイホーム」はまるで「見ないでいい。考えるな。何もするな。」と言われているかのようです。しかし、ステイするなら自分の殻の中にではなく、危険にさらされているいのちや奪われていくいのちの場所にステイしていたいと思います。平和やいのちの尊厳が痛めつけられている現場にステイする人々が連なり、手を携え、支え合って前進する、そのようなネットワーク・ムーブメントをこれからも共につくってまいりましょう。                     
                    (よしたか かのう)