「女性と子どもが安心して生きられる社会の実現」
を目指して

飯田瑞穂       公益財団法人日本キリスト教婦人矯風会 理事長
 異常気象が頻発する昨今、目に見えないコロナウイルスが忽然と現れ、私達は無力の前に立たされています。歩兵を組み移動する軍隊はもってのほか、どの国も兵器より医療、人々の生活や福祉へとお金を回さねばならない状況です。ところが、イージス・アショア配備計画を断念したばかりの政府は、専守防衛から憲法を逸脱する敵基地攻撃能力保有へと議論を始めました。コロナ禍で軍拡どころでないはずです。福島第一原発にたまり続けるトリチウム汚染水を海洋に放出する手続きも進んでいます。
 もともとトリチウム汚染水は、今頓挫している日本の原発総体を動かす核燃料サイクルの過程で、六ヶ所再処理工場から莫大な費用をかけずに毎年800リットルを海洋放出することになっており、事故を起こした原発から200リットル放出したとしても、いまさら驚くことはないとの国と東電の姿勢です。しかし、地球を汚染し続けるなら、いづれ次世代が苦しむことになるでしょう。私達も自然の一部なのですから。
 コロナを契機に、医療従事者や介護、保育、農業など必要不可欠な社会の機能の維持のために働いてくれる方々が、社会の根幹を支えてくれていたことがわかりました。その多くを女性が担っており、低賃金、非正規雇用で経済的に脆弱な立場にあり、非常時も男性よりも家事、育児、介護にかかわっているとの疲労の声もきこえます。国連女性機関からは、世界90カ国で都市封鎖と自宅待機を余儀なくされる中、世界でDVが増加し女性の命と尊厳が危険にさらされていることを懸念する声明が出されました(4/6)。ここ、矯風会が運営する緊急一時シェルター「女性の家HELP」(住所非公開)でも、安全な居場所を失った女性や母子でほぼ満室状態が続き、電話相談にも不安を抱えた声が届いているのです。
 社会全体がダメージを受け、その波紋がさらに弱くされた人達を覆う中、暴力を被る女性や子どもに、地球の悲鳴が重なって聞こえるようです。コロナ災禍からの復興には、矯風会が地道に訴えてきた「女性と子どもが安心して生きられる社会の実現」を目指す女性の視点が欠かせなくなっています。経済は、社会的弱者が幸せになれる健康な社会作りに用いられるべきです。暴力と格差と差別で社会の片隅に放り出される人がいませんように。武力によらない平和を求め、地球をいたわる女性の視点を政治の中に、生活の中にと祈ります。         (いいだ みずほ)