終りの時の愛の先取りとして

キリスト者政治連盟常任委員 荒井克浩
 しかし、まことの礼拝をする者たちが、霊と真理をもって父を礼拝する時が来る。今がその時である。なぜなら、父はこのように礼拝する者を求めておられるからだ。
                (ヨハネによる福音書4章23節)

 2018年4月27日朝9時半ちょうど、私は私の勤務するNPO法人今井館教友会(*)に向かい都立大学駅から歩きつつ使い慣れないiPadの画面を見ながら、こみ上げてくる涙を感じていました。画面には、大柄な朝鮮民主主義人民共和国の金正恩朝鮮労働党委員長が独りで板門店の軍事境界線まで進み、待っていた大韓民国の文在寅大統領と笑顔で握手を交わした後、正恩氏は韓国側地域に足を踏み入れた始終が映されていました。
 私は6年前の2012年8月23〜28日に持たれた「日朝国交正常化をめざす神奈川県民の会第2次訪朝団」に、坂内義子キリスト者政治連盟委員長(当時)と加わり訪朝しました。26日には平壌にある2つのプロテスタント教会のうち代表的なポンス教会の礼拝に参加し、孫孝順(ソン・ヒョスン)主任牧師、宋鉄民(ソン・チョルミン)担任牧師にご挨拶、キリスト者政治連盟よりの朝鮮基督教聯盟委員長宛親書をお渡ししました。植民地支配の謝罪を表明した書面でした。その際に孫牧師は私たちに1枚の壁面のプレートを見せて、このように言われました。
 「朝鮮戦争で、平壌市内にある教会堂がすべて破壊されました。しかし1988年にこの教会堂が建設され、2005年に改築し、2008年4月復活祭の時から再び礼拝を始めました。改築に協力して下さった南朝鮮の教会・団体名をここに記しています」。当時は共和国全体としては、南朝鮮(大韓民国)を強く批判している時期でした。しかし教会に於いては南の献金に深く感謝をしているのです。
 あれから6年経ちますが、信じられない光景が私のiPadに映し出されていました。「霊と真理をもって父を礼拝する時が来る。今がその時である。」とイエスは言われました。未来に来るはずの真の愛に溢れる礼拝が、たった今ここに来ている、という驚くべき現実を、主イエスがサマリアの女に語っているところです。
 終りの時に成就する完全なる愛を、今与えられているのがキリスト者です。私たちの平和の運動は、その霊感と信仰的事実に支えられるものでなくてはなりません。まさかと思われる平和を私は6年前に体験いたしました。そして今、まさかと思われる現実を目の当たりにしています。神のまさかは、現実であります。そのまさかを信じ、そのまさかこそキリストの現実と受け止めて参りたいと存じます。 
                                          (あらい かつひろ)
*内村鑑三所以(ゆえん)の今井館聖書講堂と資料館を運営管理している。筆者はそこの常務理事。