静かで平和な空を━厚木訴訟高裁判決に寄せて

今村 直   キリスト者政治連盟 前書記長


 菊花香る。晩秋の空は高く澄み絹雲が流れる。この空を米軍ジェット戦闘機が東京郊外の我家(町田市)の上空を爆音をまき散らして飛び去る。

「爆音にテレビの音声打ち消されしばし無声のドラマを見おり」(朝日歌壇 海老名市 齋藤洋一)

 基地周辺住民の忍苦と爆音被害への静かな怒りの詩である。
 米海軍と海上自衛隊が共同使用する厚木基地(神奈川県大和市、綾瀬市)には横須賀を母港とする米原子力空母(ロナルド・レーガン9万7千トン)の艦載機が飛来し滑走路を空母の甲板に見立てて離発着の訓練を繰り返す。基地滑走路の北端、大和市では昨年、70デシベル以上の騒音を2万589回記録している。基地周辺の24万世帯の住民は、爆音、爆風、補助タンクの落下・機体墜落事故などで声明を日々脅かされている。
 「静かで平和な空を」の実現をめざして私たち基地周辺の市民約7千人は米軍機と自衛隊の夜間・早朝の飛行差し止めと騒音被害に対する損害賠償を国に求め、07年12月民事訴訟と行政訴訟で横浜地裁に提訴(第四次厚木基地騒音訴訟)。
 東京高裁はこの夏、7月30日、一審の横浜地裁判決に続き、自衛隊機の夜間・早朝の飛行差し止めと約94億円の賠償支払いを命じた。米軍機の飛行差し止めについては「国に権限がない」として訴えを避けた。政府、原告とともに上告、審理の舞台は最高裁に移り最終局面を迎えている。
 沖縄辺野古への新基地建設の強行、CV22オスプレイの横田基地(東京都福生市など)への配備(米国防総省5月11日発表)など在日米軍基地は強化されていく。この軍事基地強化と連動しての9月19日、強行採決・成立した安全保障関連法は30日公布、年度内3月末までに施行される。日本の米国に対する軍事的従属関係は事実上強化されることになった。
 いま瀕死の民主主義を再生、復活させる唯一の道は「小さな人間」市民一人ひとりが憲法9条を抱きしめ、神の啓示による平和国家の理想を追求しあくまでも堅持することにある。
 「永遠平和は空虚な理念ではなく、われわれに課せられた使命である」(カント)
              (いまむら すなお)