そのときでは すでに手遅れ

坂内 宗男(ばんない むねお)/日本友和会<FOR>理事

    ニーメラーの言葉
 最近フランク・パヴロフの書いた『茶色の朝』(絵本、大月書店)を読み、ナチと闘ったドイツ告白教会牧師ニ−メラ−の言葉「ナチが共産主義者を襲ったとき、自分はやや不安になった。けれども結局自分は共産主義者ではなかったので何もしなかった。」に始まり、更に社会主義者→学校・新聞・ユダヤ人へと攻撃の手が加わったが、そこでやはり何もせず、また何事も行わず、教会を攻撃されて自分はまさに教会の人間であったと気付き、何事かをしたときにはすでに手遅れであった、を想起し、それが今のわが国の世相と重なり慄然としたのだった。本著が刊行されたフランスの読者にとっては、茶色とは茶シャツ隊ナチスと直感する。ペットの犬・猫をめぐって、遂には茶色以外全てが法律に合わないとして違法→国家反逆罪となり、結局全員逮捕と相成るという寓話なのであるが、1998年フランスの統一地方選挙で台頭した極右勢力に危機感を持ち執筆したとのことで、まさにファシズムや全体主義の恐ろしさを身をもって示していると思う。
 あの昨年12月しゃにむに成立を計った特定秘密保護法を始めとして、安倍政権は、かつてのアジア・太平洋戦争で猛威をふるった言論の自由の抹殺→偽りの一方的大本営発表と有無を言わせぬ強権取締り治安維持法の再来を思わせるかの如く、現平和憲法を強行に改定せんとし、かっての天皇制軍事国家の復権を目指し、民衆を監視し、戦争ができる国造り等々国粋主義化へと煽りたて、隣国への敵対行為、在日者への憎悪、田母神都知事候補への61万という支時、アンネの日記大量破損等々の社会現象は目に余る事態といえる。
 しかし、真の平和とは、現憲法の目指す人間の理性に信頼を委ねた道義の平和にあり、力の平和は過去のもの、今こそ世界平和を先取りしている現憲法の実体化を計ることこそ急務なのだ。また、全ての人類・生物・自然環境との平和的共存を目指さなければ私達の緑の地球は保てない(原水爆・原発破棄はその最たるもの)グロ−バル的存亡の危機に直面している今という時代であることを認識すべきではないのか。
 
    法の目的は平和
 改めてR・イェ−リング(ドイツ法学者)のいう「法の目的は平和であり、これに達する手段は闘争である」を噛みしめ、タナボタ式に平和は到来するものではなく、ここにこそキリスト者平和ネットの存在意義もあり、手遅れと言わしめない日常の積極的平和活動が求められているといいたいのである。 (ばんない むねお)
 





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