「英連邦戦没捕虜追悼礼拝」

岡田 仁(おかだ ひとし)/富阪キリスト教センター総主事

 毎年8月第1土曜に、英連邦戦死者墓地(神奈川県保土ヶ谷)で追悼礼拝が行われています。太平洋戦争時に日本軍捕虜となったイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ共和国、インド、パキスタンなど1873名がここに眠っているからです。その殆どは二十代で、祖国に帰ることも、家族との再会を果たすこともできず、遠い異国の地にあって炭鉱や軍需工場での過酷な重労働、栄養失調、病気のためにその尊い命を奪われた人たちです。11年前に関田寛雄先生と故大庭昭博先生のお誘いを受けて以来、私も参加していますが、一つひとつの墓碑に刻まれた祈りの言葉を読む度に、遺族の悲痛な叫び声が迫ってきます。そして、このような過ちを二度と繰り返してはならない、新たな戦争を起こしてはならないとの決意を与えられるのです。
 追悼礼拝発起人の一人故永瀬隆さんは、元陸軍通訳としてタイとビルマ(ミャンマー)で泰緬鉄道建設に従事し、戦後は謝罪の意味を込めて130回もタイのカンチャナブリを訪問し、平和と和解のために尽くされました。国がなすべき戦後処理を永瀬さんは独りで続けられたのです。その償いの一つとして戦後五十年を機に始まったのがこの追悼礼拝で、今では地元の高校生をふくめ約150名が毎年参加しています。炎天下での野外礼拝は、当時の戦没者たちの悲惨な状況を少しでも想起し追体験するという意味もあるのでしょう。彼らの無念さに思いを馳せ、悔い改めると共に、「どんな大義名分があっても戦争は二度とすべきではない」「真実は語られることによって、その真実の価値が顕われ、弥増(いやま)し、人類の歴史にとって貴重な知識の蓄積となる」との永瀬さんのメッセージを今一度心に刻みつけたいものです。
 私たちがなすべきことは、現実を見極め、国内外の仲間と力をあわせ、真の平和を実現していくことでしょう。そのためにも、東アジアにいまだに残っている冷戦構造の軍事的緊張を解き、沖縄や各国の軍事基地を撤廃すること、憲法九条とその前文を世界に広め、非核三原則を守りぬくこと、国家・民族間の紛争や内戦、戦争に絶対に反対すること、沖縄戦をはじめとする痛苦に満ちた記憶を更新し、その重荷を負いつつ将来に向かって生きることを大切にしたいのです。集団的自衛権の行使合憲への動きは、戦争を遂行できる国家への第一歩であり、「平和のうちに共に生きよ」とのイエスの福音に明らかに逆行するものです。
 北朝鮮・韓国、中国、台湾と日本の関係など、日本の教会の取りくみの困難さをおぼえます。しかし、沖縄をはじめ東アジアの平和を目指した自律的協力関係、平和のフレームを作るのは私たち市民です。置かれているその場で平和主義者として生き、すべての基地と核兵器をなくし、戦争をさせない世につくりかえていく私たちでありたいと願います。
 戦没捕虜追悼礼拝は今年二十回目を迎えます。
                                            (おかだ ひとし)


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