権力の愚かさ「三里塚農民の農地取り上げ」の犯罪性


日本自由メソヂスト教団牧師  
安藤眞一(あんどう しんいち)



 列王記が伝える「ナボトのぶどう畑物語」は、時の王と王妃が、善良な農民ナボトに罪をなすりつけて石打の刑で殺し、ぶどう畑を無理やり取り上げるという残酷な物語ですが、現代の日本でも同じことが権力者によって行われています。それは「三里塚農民からの農地取り上げ問題」で、100年間、三代続いて平穏に耕作してきた農地を「成田空港の拡張に必要だから無理やり取り上げる」という暴挙です。
 権力者としては成田空港株式会社と千葉県、成田市、そして裁判所です。彼らは、耕作権者の市東さんに無断で農地を買い上げ(違法行為)て、じゃまだから出ていけと裁判所に明け渡しの裁判などを行いました。市東さん側の主張が正しくても裁判官は無視し、権力者に偏った訴訟指揮を行っている有様です。私も年間4回ぐらいの裁判傍聴を体験して、この国の民主主義や正義はどうなるのか、と疑問や怒りを持つ一人です。権力者の狙いは、市東さんの農地を取り上げることと、市東さんや三里塚反対同盟の皆さんが、戦争に反対し、成田空港の廃港を主張する活動を根絶やしにしたい、という意図で、裁判官も一体となった暴挙を続けているのです。詳しくは「市東さんの農地取り上げに反対する会」  http://www.shitou-nouchi02.net/ を参照してください。
 私が、冒頭に聖書の物語を引用したのは、三里塚農民の戦いが、敬虔なクリスチャン戸村一作氏が反対同盟の委員長に就任され、平和を作り出す信仰者として運動に生死をかけたことを思い起こすからです。彼は、集会のあいさつに立つとき「真理はあなたたちを自由にする」と書かれたたすきをかけて、主の平和を訴え続けました。
 私は、戸村氏のこのような姿に感激し、20歳のころから三里塚の問題をライフワークとして取り組んで来た者です。戸村氏との出会いによって、私の地元である淡路島での平和、環境、人権の問題と取り組むことに目覚めて、今日まで様々な活動を続けてまいりました。いま伝道者としての私の姿勢も、三里塚への関わりによって定まったことと思います。
 三里塚の農民の皆さんは40数年間、自然と体にやさしい農作物を育てて、安全な食べ物を提供し続けています。三里塚反対同盟の農業を守る闘いは、自然を収奪し、人権を踏みにじる国家権力や空港会社の正体を暴露しています。「成田空港を建設する決定は、最初から農民を無視し、蔑視するやり方だった。我々は、日本の農業を守る、いのちを守る、インチキな国策を許さない」この農民の声こそ真理ではないでしょうか。
 私の思いとしては、三里塚の闘いこそ主の平和を実現するミッションだと確信しているところです。いま再び「ナボトのぶどう畑」を権力者に強奪されてはなりません。現代のエリヤとなって、主の平和を実現してゆきましょう。





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