原子力に関する宗教者国際会議について


日本キリスト教協議会(NCC)議長 
小橋孝一(こばし こういち)



 東日本大震災のために多くのキリスト者が心と力を尽くしていますが、日本キリスト教協議会(NCC)でも昨年エキュメニカル震災対策室(JEDRO)を立ち上げ、加盟教団・団体だけでなく、日本のキリスト教各教団・団体、また現地で活動している各教会・各支持団体としっかり連携し、海外のキリスト者の協力を得て、支援活動を進めております。
 特に今回の震災で浮上した重大な課題は「原子力による」エネルギーの問題です。技術的、健康的、経済的、政治的なそれぞれの側面から論じられていますが、キリスト者としては更により深いところから光を当てて考えねばなりません。
 日本基督教団石橋秀雄総会議長は「議長声明」(2012年3月27日)の中で、「福島第一原子力発電所事故は、原子力発電というものが、神に祝福された世界、神の創造の秩序を破壊し、命あるものの関係を断ち切る人類滅亡の危機の始まりとなりうることを警告しています。」「今や日本は原発事故によって大漁の放射能を大気に、海に放出し、世界に対する加害者になってしまいました」「人間の命よりも経済が優先される社会の中で生きる私達の悔い改めが求められています」と述べています。
 しかし政治の世界では、悔い改めどころか経済が優先され、「再稼働」に向けて道がつけられ始めました。日本はアジアに対する「戦争責任」だけではなく、世界に対して「放射能放出責任」を背負い、神に対して「創造の秩序破壊責任」を背負って、自ら破壊する道を歩むことになるのでしょうか。
 この危機的な問題に取り組むため、日本キリスト教協議会は多くの宗教者と力を合わせて12月4日〜7日に「原子力に関する宗教者国際会議」を現地福島で開くべく準備を進めています。昨年沖縄で開催された第3回「9条アジア宗教者会議」では、海外の参加者から、仏教をはじめとした諸宗教者が多く集まる会議は大変有意義で、貴重であるとの評価を受けました。ぜひ、この豊かな枠組みを使って、原子力や核エネルギーに関する協議をしたいとの声があり、それらに応える形で準備会が発足しました。
 予定では、海外の参加者の中から希望者が郡山を中心に現地学習をすることになっています。また会議の中でも、幼い子どもを持ち、放射能汚染の恐怖を抱えながら現地で暮らす母親や、震災直後から今に至るまで、心のケアを含めて活動を続ける宗教者たちに、状況を伝えていただきます。
 現地被災者の現状と声を聴いて、それを宗教者の心で受け止め、世界に向かって発信する。特に来年秋に釜山で開催される予定の世界教会協議会(WCC)総会に向かって提言することを考えています。どうかご理解とご協力をお願いします。
 重大な問題であればある程、「一致」が大切です。「一人の百歩より、百人の一歩」をモットーにして、「焦らず、諦めず、主による希望を抱いて」、活動を進めてまいりたいと思います。共に祈りを合わせましょう。





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