非暴力の愛の精神の実践をめざして


日本友和会書記長       
飯高京子(いいたか きょうこ)


 聖句:「あなたがたも聞いているとおり、『隣り人を愛し、敵を憎め』と命じられている。しかし、わたしは言っておく。敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。あなたがたの天の父の子となるためである。父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださるからである。」(マタイによる福音書5:43−45)

 最近「脱原発世界会議」が横浜で開催された。日本友和会からも有志が参加した。参加者は海外から100余名、国内から1万名を超えた。一方、会場近くでは街宣車が「この会の主催者は活動資金を集めるため危機感を煽ろうとする反体制主義者」と攻撃したとのこと。原子力発電を推進する勢力は、米国を始め世界各地で利権をむさぼる集合体である。わが国財界も経済発展のためにと、東日本の土壌や海への放射能汚染、増え続ける危険な核廃棄物への対応を棚上げしたまま、原発再稼働を強く求めている。目隠しされた馬車馬のような人類破滅への暴走を、何とか阻止したい。
 巨大な軍事力をもち、世界に紛争の火種をまく国家や勢力に対し、私たちの所属する国際友和会は、国家、人種、宗教、性差の壁を乗りこえて、非暴力精神による平和運動を推進している。昨年秋の「非暴力トレーニング」で、指導者エッサー氏は体験談を紹介した。それはルワンダで部族闘争により家族や友人を皆殺しにされた一人の女性の話である。彼はひたすら彼女の復讐への思い、怒り、憎しみに耳を傾け、彼女がやっと落ち着いた時に祈って別れた。一年後に再会したとき、彼女は復讐しないのみならず孤児院を設立、自身50名の孤児たちを養子に引き取っていた。その施設に働く職員すべてが同様に孤児たちを養子にしていた。非暴力による争いの解決は、対立からの逃避ではない。キリストは「敵を愛し、迫害する人のために祈る」ことを求めておられる。理不尽で身勝手、自分に対して害を加える可能性もある人のために祈ることは、まことに困難である。また平和運動を通して、思想、信条がキリスト者とは異なる人にも出会う。相手が自分と同じ信仰の持ち主でないからと彼を疎外せず、共に平和のために働くことが求められる。
 日本友和会の会員、故阿波根昌鴻氏は、米軍が沖縄農民の農地を基地に接収した時、徹底的非暴力手段で抵抗運動をした。彼は仲間に「決して相手をののしらない。凶器になるような棒を持たない。暴力をふるうと誤解されぬよう両腕は肩より上に挙げない」と説いた。あれほどふみにじられても、沖縄の人々が流血の惨事を起こさず抵抗運動を続けているのは、阿波根さんの愛の精神による強い支えがあるからだという。3月3・4日、阿波根さん没後10周年記念会が伊江島で予定され、日本友和会の有志はこの会に参加する。同時に、苦難にたち向かう現地の友人と祈りを分かち合いたいと願っている。




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