女性が創りだす安全な世界


日本YWCA総幹事       
西原 美香子(にしはら みかこ)


 「女性が創りだす安全な世界」。これは去る7月にチューリッヒで開催された世界YWCA総会のテーマです。「安全」とは何か。その解釈は多岐にわたりますが、世界YWCA総会の公開イベントとして開催された国際女性サミットの開会で、スーザン・ブレナン世界YWCA会長は、「女性にとって安心・安全な場所とは、国や行政が言う安全網に閉じ込めるようないわゆる安全保障ではなく、女性たち自らが私的な安全を確保できることである」と明言しました。東日本大震災以降、「安全」という言葉が頻繁勝つ安易に用いられていますが、私たちは今一番「安全」について捉え直す時ではないでしょうか。
 国際女性サミットでは、世界約100カ国1000人を超える女性たちが集い、女性への暴力、HIVとエイズ、性と生殖の権利、健康等に関わる課題について解決に向けた実践を共有します。世界YWCAは、ここから導き出された課題を国際機関に提出し、国連ミレニアム開発目標の期限である2015年以降のアジェンダに入れるように国連に働きかける役割を担っています。今回実施された50もの分科会でのディスカッションを通して再認識したことは、政府レベルの国際会議で決定したことが、生活者である女性の視点では運用されていない、あるいは現状にそぐわないということ。だからこそ、決定事項を日々の生活レベルで生かすために、各国政府に対して粘り強く、確実に働きかけていくことが必要だということでした。
 総会の前日、私たち日本YWCAのメンバーはウクライナYWCAのメンバーたちと食事を共にし、チェルノブイリ原発事故の経験と東京電力福島第一原発事故後の状況を分かち合いました。ウクライナYWCAのナターシャ・ウリアネツ会長が、「チェルノブイリ事故当時は旧ソビエト連邦時代だったので、住民は徹底した情報統制下にあった。不安を抱える女性たちは自ら情報を収集し、判断して行動するしかなかった」と語りました。福島の子どもと女性たちの安全と安心を守るために、私たちは日本政府に働きかけ続けています。それと同時に女性たち自らが健康と生活を守るための情報収集・判断・行動ができるような状況づくりに一層力を尽くさなければならないと彼女たちと話しながら強く思いました。会期中、私たちは各国YWCAの代表者たちに声をかけては福島の子どもや女性たちがおかれている状況を伝え、日本のみならず地球上にある500基もの原発を止めるために訴えて回りました。国家レベルでは原発推進国にあるYWCAもあります。しかし、誰もが福島の女性たちの不安や苦しみに共感と連帯の意志を示してくれたことは励みであり、最終日、全体会での日本YWCAの世界規模の脱原発のアピールがスタンディングオベーションとなったことは、今後に向けた希望でした。
 「あなたは命を選び、あなたもあなたの子孫も命をえるように」(申命記30:19)の聖書のみ言葉に聞き従いつつ、女性たち自らが安全な場を創りだすための活躍を続けたいと思います。




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