「牧師研修と平和」


財団基督教イースト・エイジャ・ミッション
富坂キリスト教センター総主事
岡田 仁(おかだ ひとし)


 財団富坂キリスト教センターは、キリスト教社会倫理の学際研究と並んで2002年より指導者養成講座(牧師研修会)を企画してきた。「主を畏れる」を主題に、八甲田、鹿児島、松山、佐渡での現地牧師研修を経て、今年9月にはドイツよりベルトルト・クラッパート教授をお招きし、第二回合同牧師研修会を開催した。「メシア・イエスは、旧約聖書とユダヤ教に属する」の主題のもと旧約聖書から新約聖書を読み直し、超教派(教団、バプ連、日基)の信徒、牧師が4日間の共同生活の中で礼拝と主の晩餐を共に祝うというエキュメニカルな研修であった。希望のしるしとして賛美歌「マラナ・タ」が幾度も歌われ、期間中には新しい歌が牧会研修会の讃美歌として生まれた。
 「イエスは、イスラエルと異邦諸国民全体のために召し出され、神の僕としてイサクの歩んだ道(創世記22章)を反復する。このイサクの道を、イエスは12弟子だけでなく、今日の私たちにも求めておられる」とクラッパート師は語る。ドイツも日本の教会も旧約聖書を軽視し、国家にからめとられてきた歴史をもつ。ユダヤ教との対話をとおして聖書全体のもつ豊かさにふれると同時に、ナチに抵抗し処刑された牧師・神学者ボンヘッファーの聖書の読み方やユダヤ人への見方が時代状況と共に変化していく様を改めて学んだ。
 最終日のローズンゲンの箇所はコリント2,1章20節であった。「神が何を約束し、何を成就するのかを認識するためには、僕たちは繰返しきわめて長くかつ冷静に、イエスの生涯と、言葉と、行為と、苦難と、死とに深く沈潜しなければならない。(略)神はイエスにおいて、これらの全てのことに対して『しかり』と『アーメン』を語った。この『しかり』と『アーメン』こそが、僕たちの立つ堅い基盤なのである」(D・ボンヘッファー)。
 ボンヘッファーは、1935年から告白教会の牧師研修所所長として働く傍ら、世界教会の中で告白教会のためのネットワーク作りに尽力する。研修所によって彼自身が支えられ、外部で迫害を受けている同労者の運命を研修所のものにしていく。この世に対していかにあるべきか、そのための霊的な養いと訓練が研修会のものとなったのである。社会倫理と黙想、礼拝、祈り。これら告白教会牧師研修所の柱を日本の牧師研修会も継承してほしい、とクラッパート師は私に語られた。
 日本の教会のなすべきことは、神のみを畏れるとの第一戒をもつ教会に成長すること、同時にエキュメニカルな教会のネットワークを構築することであろう。イエス・キリストの一つなる教会が個々の教会の基礎にある。神の約束に開かれた途上に生きる者として「アーメン」に堅く立ち、多様性のなかの一致と対話、和解と平和の働きに仕える信徒と牧師の研修と養成が今後一層求められている。




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