「平和運動と国連大学」

キリスト友会日本年会 社会平和委員会
佐々波 秀彦(さざなみ ひでひこ)

 私は1982年から1993年まで11年間、名古屋に所在する国連地域開発センターに勤務し、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの開発途上諸国の行政官や技術士の養成や、現地での事業計画のアドバイス等をしてきました。そこで、本稿では平和運動と国際連合、その中で特に国連大学を焦点に当てて考えてみたいと思います。
 今日の国際連合は、第1次大戦後ウィルソン米大統領によって提唱され、1920年に発足した国際連盟を引き継いで、第2次大戦後の1945年に発足しました。国際連盟については、私たちのキリスト友会の指導者であった新渡戸稲造さんが国際連盟発足当初から7年間、事務次長として勤務され、国際人として大いに活躍されました。
 国際連合では、国際社会の平和の維持と確立を最重要課題とし、このために安全保障理事会が設立されましたが、根本的に世界平和を推進していくためには、経済的・社会的・文化的・人道的諸問題を解決することが求められます。このために国際連合は本部の外にユネスコ、ユニセフ、WHO等の専門機関が存在します。これから取り上げる国連大学もユネスコの関連機関として位置付けられています。国連大学構想は、1969年当時、ウ・タント国連事務総長の発意によって国連総会に提唱され、彼は、各国から派遣された教授がスタッフとなり、様々の国また文化の中で育った若い男女を学生として教育し、これらの学生は、国際的な雰囲気の中で学び、生活することにより、その創立期においてさえも、彼らはただ誤解と不信を造り出すに過ぎない様々の国家や文化との間の障害を打ち破ることができると述べています。
 ウ・タント事務総長の提案は、キャンパスを持った大学の設立でしたが、1973年に採択された国連大学憲章では、大学本部とその付属研究所、訓練センター群からなる学部・学科、キャンパスを持たない国連大学の設立が勧告されました。この結果、ウ・タン事務総長の提案に積極的に賛同したわが国には、現在、国連大学本部が東京渋谷に立地し、環境保全と平和問題を考究する研究組織が付置されています。また横浜市には国連大学高等研究所が所在し、東京大学、慶応大学等の協力を得て活発な研究活動を展開していますが、取り組むべき問題は山積しています。ワークキャンプ、ワークショップ等で実践や討論を通じての活動も非常に役立ちましょう。その際、国際的な連携は今後ますます重視されると思います。
 ここで、私は国連大学本部が我が国や世界の諸大学と協力して、平和、環境、地域開発を専攻する学部・学科を創設して、、国連大学でドクター、マスター、一般のディプロマを得た学生が、それぞれ世界各地で活躍できるような大学制度改革を行うことを提案したいと思います。
 特に平和問題に関心をもつわが国の諸大学がどのように国連大学と有効な協力ができるのか、平和を実現するキリスト者ネットにおいても徹底的に検討していただきたいと思います。




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